5q-症候群

 1974年にVan den Bergheらは大球性貧血,無効造血,低分葉巨核球,正常から軽度増加を示す血小板数,5番染色体長腕(5q)の中間欠失(deletion(5q)/5q-)などの特徴を有する5名の骨髄異形成症候群〈MDS〉患者を報告し, 5q-症候群の疾患概念を提唱した.その後,この病態は他の染色体異常を呈するMDSと比較して中年女性に多く,骨髄中の芽球は5%未満で白血病転化を起こしにくく,かなり均質な症例集団からなることがわかり,WHO血液腫瘍分類(第3版)では独立した亜病型として記載された.
 一方,2006年にListらによってレナリドミドが主に低リスクMDSに有効であることが報告され,特に5q-症候群の患者で著明な貧血改善効果と異常核型が消失するという細胞遺伝学効果が示された.我が国でも5q-症候群にレナリドミドの臨床試験が組まれ,その結果,2010年8月に'5番染色体長腕部欠失を伴うMDS'の効能追加が承認された.低リスクMDSの治療戦略は,症候性貧血が主体であれば直ちに骨髄染色体分析を行い,5q染色体欠失異常が検出された症例は付加的核型異常の有無にかかわらず,レナリドミドが第1選択となる.

参考文献
1) 通山 薫:骨髄異形成症候群 5q-症候群. 別冊日本臨牀 造血器腫瘍学,日本臨牀社,2012, 362-366.
2) 通山 薫:骨髄異形成症候群 骨髄異形成症候群の治療.別冊日本臨牀 造血器腫瘍学,日本臨牀社,2012,367-372.
3) 松岡亮仁:5q- 症候群の病態解析研究の進歩.血液内科 65:316-322,2012.

日本内科学会 2013セルフトレーニング問題 Q6.より