妊娠性血小板減少症

 33歳初産婦、妊娠37週で初めて血小板減少を指摘された一例。


 子癇前症で認めるような高血圧、蛋白尿がなく、胎児の異常も報告されていない。
 よって子癇前症は考えにくい。
 HELLP症候群は、Hemolysis, Elevated Liver enzymes, and Low Platelet syndromeの略で、溶血所見、肝機能異常、高血圧がなく否定的である(表2)。

 末梢血スメアでは血小板のEDTA凝集,破砕赤血球を認めず、偽性血小板減少症は否定的。
 妊娠性血小板減少症〈gestational thrombocytopenia〉とITPは完全には鑑別できない(表1)が、妊娠後期のみで軽度の血小板減少を認めることから妊娠性血小板減少症の典型的な経過、所見と言える。仮に、妊娠後期の初発ITP としても本例での方針は経過観察となる.血小板数が5万/μl以上であれば、帝王切開術も可能である。抗核抗体陰性、蛋白尿、皮膚症状、関節症状もなく、全身性エリテマトーデス〈SLE〉の診断には至らない。