「ステイホームはしなくて良い」の意味は

分科会の尾身会長が「人流でなく人数制限」「ステイホームはしなくて良い」発言が発言が混乱を来している、とメディアなどで伝えられていますが、その真意はどこにあるのでしょう。

 

オミクロン株は従来の株に比べて感染力が強い事はご承知の通り。

つまり、より「感染の3条件を意識せよ」と言うことです。

今年(2021-2022)のインフルエンザ - 樋の勉強部屋 でお伝えした通り

感染症
①病原体(感染源)
②感染経路
③宿主
この3つの要因が揃うのことで感染します。

オミクロン株は、①が変わって、②感染経路を意識する必要があると言うことです。

①病原体を変えることはできないので、②感染経路をできるだけ潰していくことが求められます。

つまり、従来の感染予防対策を強化せよ、と言うことです。

人と会わないことが究極の感染経路を亡くすことですが、それだと社会が廻りません。

ですので「ステイホーム」するのではなく、個人個人が感染経路を断つ努力が求められる、と言うことです。

具体的には

(1)マスクを正しく装着する(鼻を出さない、隙間を無くす)

(2)マスクは不織布マスクを使用する

(3)飲食時に外しても、会話をするときはマスクを装着する

と言うことです。

「人数制限」は感染経路を減らすことになりますが、マスクを外しては感染の機会を作ってしまうので、是非、上記の3点に留意され、生活頂ければと思います。

 

かかりつけ医について

 「まずは、かかりつけ医に」という言葉をよく聞かれると思いますが、「かかりつけ医」の定義がないために、それぞれの解釈の違いから、誤解や行き違いが起こっているお話を聞きます。

 

 当院で患者さんから伺った他院の先生のコメントがあります。「診察回数も少ないし、経営的メリットがないのであなたのかかりつけ医ではない」や「定期的な診察がないのでかかりつけ医ではない」などがありました。医療的治療や経営的な視点で、そのような発言をする医療者がいらっしゃる可能性はあると思いつつ、少し寂しいと感じました。

 

 個人クリニックを開いている私が考える「かかりつけ医」については、少なくともワクチン接種や健康診断などの受診であっても、受診歴があれば「かかりつけ医」と考えていただいて良いと思っています。それに加えて、患者さんにとって近隣で行きやすいクリニックの1つであれば「かかりつけ医」と思ってくださって良いと考えています。

 そもそも、多くの方は定期的な通院を必要としない健康状態のことが多く、何か身体的な課題が見つかったときに「まずはかかりつけ医に」と言われたら困ってしまいます。もちろん、口コミや評判、紹介サイトなどを参考に、距離や場所を考慮せずに決めるのもありだと思います。

 今回のコロナウイルスワクチン接種に当り、多くの当院初診の方に接種させていただき、お薬手帳等から通院歴や投薬内容なども確認させていただきましたので、今後は何かあればご相談に来ていただいて良いかと考えています。

 

 内科以外の疾患に関しても、自分なりに知識のブラッシュアップはしている一方で、最新治療は専門家にお願いするケースも多く、先ずは来院いただき必要に応じて専門医や病院を紹介する、その様なスタンスでかかりつけ医として務めて参りたいと考えています。

今年(2021-2022)のインフルエンザ

 マスメディアの報道で「昨年、インフルエンザが流行しなかったので、今年は大流行する可能性がある」と言うのを良く聞くようになりました。これは、日本感染症学会からの「2021-2022年シーズンにおけるインフルエンザワクチン接種に関する考え方|ガイドライン・提言|日本感染症学会」によるところが大きいと思います。

 上記にも記載されている通り、インフルエンザの流行が見られたインドやバングラデシュではワクチンが普及していませんし、「例年の1.5倍の大きさの流行になる可能性」を指摘する英国では、日本ほどマスクをする習慣がありません。医療では、最善の結果を願いながら最悪に備えるのが常ですので、学会としてワクチン接種を推奨する立場にあるのは間違いがありません。

 

 一方で、インフルエンザも「感染症」であり、感染症が成立する3要素からも考えてみても良さそうです。

感染症
①病原体(感染源)
②感染経路
③宿主
この3つの要因が揃うのことで感染します。

 

1.病原体について

インフルエンザウイルスになります。毎年変異をしますが、ウイルス単体で増えることはできないので、人など生物の中で増えるわけですから、感染者が少ない現状では、ウイルスが多く出回る事はないようにも思います。

 

2.感染経路について

現在のようにマスク、手指消毒が徹底されている状況であれば、[人-人]間の感染経路はかなり制限されますので、昨年同様の感染防御できる可能性が考えられます。

一般に北半球の冬に流行するインフルエンザウイルスは、その前の南半球の冬に流行したウイルスであることが多く、現在のように、[国-国]間の交流が減っている状況では、日本に持ち込まれるウイルスも限られるのではないか、と考えられます。

 

3.宿主について

学会が懸念する、昨年の流行がなかったために、個人の免疫がない恐れがある一方で、数年前にインフルエンザの流行の中で、高齢者が発症しにくい事があったように、1年罹患がなかったからといって、直ぐに免疫が0になることもないとの予測ができます。また、睡眠不足、栄養不足、他の疾患で抵抗力が低下しているなど、ウイルスに対抗できる免疫力、体力が不足すると感染しやすくなる事の方が、現実には課題になると考えられ、これは、個々の努力次第で、感染の可能性を低くすることはできるわけです。

 

流行するかしないかは、この3つの要素のかけ算によるところが多いので、1.2.が0に近いのであれば、流行の可能性は低いように思います。大切なのは、個々の体調の管理をして、コロナウイルス感染対策同様、マスク着用、手指消毒を継続することだと考えます。

 

以上からは、インフルエンザワクチン接種を強く推奨される方は、重症化する可能性のある高齢の方、小児の方(特に2歳以下のインフルエンザ罹患歴のない方)となります。もちろんそれ以外の方で、希望される方は接種すべきと思いますが、ワクチンの供給量が例年の7割程度とのことですので、場合によっては、今年の接種を受けずに済ませて良いかもしれません。

あくまで、私見ですので、最終的には個々で判断するか、かかりつけの先生にご相談ください。

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認知症ケア 食欲と味覚

認知症の方が食事をとらなくなる原因は数多くあります。

 「義歯が合っていない」「口腔清潔が保てていない」など、口腔ケアに関することを改善することで解決する事も多いのですが、意外と多いのが、味覚・嗜好の変化です。

 もちろん、口腔ケアで味覚障害が改善することもありますが、甘味、酸味、塩味、苦み、への感じ方が変わったり、特定の特定の味覚のみを特に好まれるケースがあります。

 ある方は甘味がある物のみを好んで食べるようになり、刺身も醤油では食べないが、砂糖を掛けると食べるようになった、と言うことがありました。当初、通所・入所施設などのケアスタッフはそんなことはできない、と拒否的でしたが、実際に、砂糖を掛けると食べる所を見て、その後は、その方に合わせて、食事をとるようになり、食事量も保てました。

 

 常識的な判断だけでは、上手くいかないことも、観察したちょっとした気づきから、その方の特性や思いを推し量る事ができることがあり、今後も続けていきたいと思います。

 

冬眠から目覚めます~認知症の方への対応 1~

4年近く、冬眠しておりましたが、目覚めることにします。

以前は自分のための学習記録を目指しておりましたが、今後は、日常診療や生活でのヒントなどを、短く綴っていくことにします。

 

まず第一弾として、

認知症の方への対応 1>

 短期記憶がなくなっている方の発言に対して、訂正したり、誤認を修正しようとする方がいらっしゃいますが、本人にとっての事実を曲げて、得なことはありません。

 

・ご飯を食べたのに、「ご飯はまだか」と尋ねる

 本人に取っての事実は「ご飯は食べていない」訳ですので、「食べたでしょ」の一言は、反発を生むだけで、それがお嫁さんの言葉だったりすると「うちの嫁は私にご飯を作らない意地悪をする」と言うことになるわけです。

 ですから、教科書的には「今、準備しているので待っていてください」と話し、そのうちに「ご飯を食べていない」と認知したこと自体も忘れることさえあります。

 陰性感情は強く残るので「食べさせてもらえない」と感じてしまっていると、いつまでも同じように「ご飯はまだか」と言うこともあるかもしれません。その時は、思い切って、もう一度食事を提供すること(そんなに豪華でなくて良い)も一つのやり方でしょう。また、たびたび、同じ発言があるようなら、食後に食器を片付けないことで、本人に「食べ終わった」ことを認知できるようにすることも一案です。こちらも、陰性感情が強いと「私の分を誰かが食べた」ことになるかもしれません。

 

 一つの事象だけでは、なかなか、解決しないケースもあると思いますが、できるだけ、本人が安心して、暮らせるような生活の仕組みや仕掛けをしていく事で、このような対応困難な行動が減っていきます。

 

 ご家族、関係者は大変だとは思いますが、丹念に、女優、俳優になって、演じて頂ければと思います。

新オレンジプラン

とうとう、一年間、皆さんにシェアできるような勉強をアップすることなく過ぎてしまいました m(_ _)m

今年は、完結した一つの記事をまとめ上げる事にこだわらず、日々の中で気付いたことを書き留めていこうと思っております。


さて、

先日(平成27年1月27日)、認知症施策推進総合戦略〜認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて〜(新オレンジプラン)が発表されました。

京都で2011年から取り組んでいる、京都式オレンジプランの内容を意識したもので、「戦略」と言う文言はありますが、通常のSpecialistからの施しにこだわるのではなく、認知症の患者さん本人、家族の思いを込めていく方向性からは、通常の疾病との違いが大きいものです。

様々な生活習慣病などの疾病を来さない先にたどり着く場所でもあります。専門職のみならず、社会での共通認識を形成していくことも大きな課題の一つでしょう。

妊娠性血小板減少症

 本例は子癇前症で認めるような高血圧,蛋白尿がなく,胎児の異常も報告されていない.よって子癇前症は考えにくい.HELLP症候群は,Hemolysis, Elevated Liver enzymes, and Low Platelet syndromeの略で,溶血所見,肝機能異常,高血圧がなく否定的である(表2).末梢血スメアでは血小板のEDTA凝集,破砕赤血球を認めない(写真).妊娠性血小板減少症〈gestational thrombocytopenia〉とITPは完全には鑑別できない(表1)が,妊娠後期のみで軽度の血小板減少を認めることから妊娠性血小板減少症の典型的な経過,所見である.仮に,妊娠後期の初発ITP としても本例での方針は経過観察となる.血小板数が5万/μℓ以上であれば,帝王切開術も可能である.抗核抗体陰性,蛋白尿,皮膚症状,関節症状もなく,全身性エリテマトーデス〈SLE〉の診断には至らない.表2に妊娠に伴うmicroangiopathy(微小血管障害)の鑑別疾患,鑑別点をまとめたので参照していただきたい.