臨床遺伝子学の進歩と日常診療(その1)

!注意!:自分なりの学習のまとめですので、間違っている場合があります。その点をご理解の上、お読みください。

(1)ある女性の、兄と母方の叔父はDuchenne型筋ジストロフィーDMD)に罹患している。この女性には、健康な息子が2人いる。3人目の子がDMDに罹患する確率は?

 家系の状況を条件確率として加味するベイズ分析を行う。DMDはX連鎖劣性遺伝である。女性の兄が罹患しているしているので、この女性の母は絶対保因者である。

 次に、事前確率を出す。女性の母が絶対保因者であるので、女性が保因者である確率は1/2(a)、保因者でない確率は1/2(b)。

 その次に、条件確率を出す。この女性は健常な男児が二人いる。
 保因者である場合に二人続けて健常男児を産む可能性は1/2×1/2(c)。保因者でない場合は健常男児しか生まれないので、確率は1(d)。

 これら二つより複合確率を出す。複合確率は事前確率と条件確率を掛け合わせたものなので、保因者である場合、(a)×(c)で1/8(e)。保因者でない場合、(b)×(d)で1/2(f)。

 これらより、現状の家系でのこの女性が保因者である、帰納確率は(e)/(e)+(f)で、1/8/(1/8+1/2)で1/5(g)となる。

 保因者から罹患者が生まれる確率は、「男児」(男性か女性か)かつ「原因遺伝子の引き継ぎ」(原因遺伝子か健常遺伝子か)であるので1/2×1/2で1/4(h)。

 よって、この女性が3人目の子を産んだ場合に、その子が罹患者である可能性は、保因者である帰納確率(g)と、保因者から罹患者が生まれる確率(h)と、を掛け合わせて、(g)×(h)=1/5×1/4で1/20となる。

 この問題のミソは「この女性から生まれる3人目の『子』は?」というところ。『子』なので、男も女もあり得るのだが、DMDはX連鎖劣性遺伝なので、女性の罹患者はいないので、その分の確率が下がる。国家試験ならちょっとした「引っかけ問題」かな(笑)