成人百日咳

【百日咳】成人での感染例が急増:日経メディカル オンライン 【百日咳】成人での感染例が急増:日経メディカル オンライン


 百日咳は過去の感染症として認識されてきたが、成人の割合が増えている。2000年は全報告のうち2.2%だったのが09年には40.5%。今年は5月23日時点で54.9%と、過去10年で最高となっている。TVで、「50歳以上の女性に多い」と紹介されたようで(番組名不明)で、該当者で3日以上咳が続いていると「百日咳では?」と受診される方が増えてきた(^^;

 まずは、予防接種の経緯から。
 1950年に百日咳ワクチンが導入され、副作用発生から接種率が下がったものの、改良されて81年に現在のジフテリア・百日咳・破傷風三種混合(DPT)ワクチンが定期予防接種に導入され、百日咳患者は減ってきた。しかし、それにより、流行の規模が小さく、間隔が長くなったため、今度はワクチン接種後に自然罹患による追加免疫を得られない世代が増えてきた。これが、成人の百日咳報告数が急増している要因と言われている。ワクチンによる抗体は、この自然罹患や追加接種がなければ、ブースター効果がなくなり、10年以内に減衰すると言われている。

 何しろ、これまでが「小児科」の病気と考えられてきたこともあり、内科での診療、特に診断は難しい。成人の百日咳は、痙攣性の乾性咳嗽や吸気性笛声といった典型的な症状が出現せず、軽症なことが多いこともある。問題なのは、そのような患者がワクチン接種前の乳幼児への感染源になることであり、孫の世話をしているお祖母ちゃん世代には今後は注意していきたい。

 さて、診断だが、何と「成人の百日咳については、診断法がまだ確立されていない」のだ(>_<)
 参考になるのが、国立病院機構福岡病院統括診療部長の岡田賢司氏が作成した百日咳診断基準で、記事中の2ページに表として記されている。臨床症状としては14日以上咳があり、1.発作性の咳き込み、2.吸気性笛声(Whoop)、3.咳き込み後の嘔吐。検査所見としては発症4週以内が菌の培養分離、遺伝子診断+対血清による血清診断、発症4週以降は遺伝子診断(LAMP法)+対血清による血清診断となっている。しかし、LAMP法は全国で数カ所でしかできず、対血清も正確にやるなら診断まで時間がかかるし、2度検査をする必要性を説明する手間や2度目未受診などの問題もあり、現場では臨床症状から臨床診断を下し、治療的診断をせざるを得ない、と思う。