小児用肺炎球菌ワクチン

日本医師会雑誌題139巻、第1号に掲載の座談会記事に対する考察です。

(医療経済性)
 肺炎球菌による一人当たりに必要な医療費が約85万円で、同様にその他、菌血症、肺炎、急性中耳炎の医療費も算出すると、医療費の総計は1809億円となる。これに親の看病や重症化した小児の将来的な労働損失など、医療費以外の生産損失を合わせると4743億円となる、とのこと。
 この推計というのは、道路建設の予想通行量がごとく、常に眉唾ものなのだが、推計誤差を半分と考えても医療費約1000億円、推計生産損失合算で2500億円となる。

(社会的影響)
 また、子どもに接種することで、2歳以下の小児の肺炎球菌による髄膜炎は激減し、2〜4歳の髄膜炎も減少し、65歳以上の髄膜炎も有意に減少する、という集団免疫の効果も発表されている(MMWR 2005;54:893-897)。こういう効果が事実であれば、こういった予防接種こそ、公費で集団的にすべきものだと考える。
 これらを踏まえ、侵襲性肺炎球菌感染症(Invasive Pneumococcal Disease ; IPD)予防を目的でワクチンを接種することで、結果的に社会全体で感染症の減少が期待できる。100%摂取率で4回接種、\7,000/回とするとワクチンの総費用は296億円で、削減される感染症に対する直接の費用と生産損失を併せると687億円となる(小児用7価肺炎球菌結合型ワクチンの医療経済効果.小児臨床 2008 ; 61 2233-2241, 神谷齊)。

 このような効果がはっきりと数値で出ず、また、単年度では数値化が難しいことは、国などの予算化が難しいため、このような視点で制度が変わっていくのは難しいであろう。財務省が権益を握っているタバコ産業に比べれば、変わる可能性はあるとは思いたいのだが。