入口問題〜アクセスを受ける側(専門職、市民、行政など)の要因〜

 認知症の人やその周辺状況の課題を、発見するところから、発見された後に対応を開始するところまでが含まれ、医療・ケア・行政・制度・地域などの要因が含まれる。

アウトリーチ機能の不在・未成熟
・初診をサポートするサービスの不在
・かかりつけ医の認識・知識の不足
認知症と診断された後の対応の不明確さ
地域包括支援センターの経験・技術不足や感度不足
地域包括支援センターの役割についての制度的問題
地域包括支援センターに対するサポート機能の不足
・ケースワークを行う機関の不在
・行政の無関心や真剣味の欠如
・早期発見するシステムの未整備
・地域の医療・ケア・行政・住民の連携不足
・地域の見守り体制の不足や地域の機能不全
・地域力不足(新興住宅地などの未成熟コミュニティー

 「かかりつけ医の認識・知識の不足」に関しては、自戒すべき点もあり、認知症の問題行動が表面化してから気付くことも少なくない。少し気になる点があれば、「頭の体操をしましょう」と長谷川式簡易スケールやMMSE(Mini-Mental State Examination)検査をするように心がけている。投薬日数と受診間隔がずれている場合、内服薬の飲み忘れなどがあり、短期記憶の障害?と思い、検査することも多かったが、多少の飲み忘れはあっても、残薬数をきちんと認識されていることが多く、問題ないことも多い。逆に気付かれにくいのは、きっちり受診していて内服できていると思っていたら、家に大量の薬がある様なケース。最近、一つの目安にしているのは、「いかがですか?」という最初の問いかけに対し、いつも「同じ文言」で応える方(例えば「大丈夫です」など)は、その都度起こっている自分の体験を語れない方もいるわけで、少し気に掛けるようにしている。
 「うちには認知症の人は来ない」という開業医の方がいらっしゃるが、例え小児科であっても付き添いの祖父母が認知症で、不必要な受診や十分な治療が行えていないケースもあることが考えられ、「もしかしたらこの方は認知症かも」という「〜かもしれない」思考をしておくべきである。とは言え、「認知症」以外はこの思考で診療にあたっているかたがほとんどであろう、と思われる。