Basedow病に対する抗甲状腺薬治療について

 Basedow病に対する抗甲状腺薬治療では妊娠初期,殊に妊娠4 〜 7週を除き、チアマゾール〈MMI〉を第1選択薬とすることが推奨される1)。最終的な治療効果はチアマゾール〈MMI〉とプロピルチオウラシル〈PTU〉の間に明確な差はない。
 妊娠4 〜 7週では抗甲状腺薬としてPTU投与の方が、胎児奇形(臍腸瘻,臍腸管遺残症,頭皮欠損など)を認めなかったという、我が国における前向き研究(POEM試験:Pregnancy Outcome of Exposure to Methimazole)の中間報告(研究代表者 荒田尚子)が示されており、最終報告ではないが、妊娠初期のBasedow病患者では極力PTUを投与すべきである。

 Basedow病が寛解しているかどうかを判定する指標としてはTRHテスト、血清サイログロブリン値、血清T3/T4 比、T3抑制試験、TSH 受容体抗体〈TRAb〉などがあるが、現在は簡便性と有用性から主にTRAbが用いられている。寛解する例と再発する例の間には,抗甲状腺薬中止時のTRAb値に有意差があることが示されているが、TRAbが陰性でも約3割は再発し、陽性でも約3割は寛解するため、確実な指標とは言えないが、抗甲状腺薬開始後6か月、12か月後にTRAbが高値のものは寛解は望みにくい。抗甲状腺薬の中止の目安としては、抗甲状腺薬1錠隔日服用でも6か月以上、TSH値を含めて甲状腺機能が正常に保たれていれば中止を検討してもよい2)。

 抗甲状腺薬の重大な副作用には無顆粒球症、多発性関節炎、重症肝障害、MPO-ANCA関連血管炎症候群などがある。ほとんどの副作用は服用開始3か月以内に起こる。無顆粒球症の頻度は,MMIとPTUで差がないという報告や、PTUの方が多いとの報告がある。一般にはPTUの方がMMIと比べて有意に重大な副作用の発現頻度が高い。MPO-ANCA関連血管炎症候群はPTUで多く、いつ発症するか分からず、服用開始1年以上経って起こることもあるので注意を要する。

参考文献
1) 日本甲状腺学会(編集):バセドウ病治療ガイドライン2011.南江堂,2011,23-160.
2) Konishi T, et al:Drug discontinuation after treatment with minimum maintenance dose of an antithyroid drug in Graves’ disease. Endocr J 58:95-100, 2011.

2013年 日本内科学会 セルフトレーニング問題 Q10.より